NO.35<事業承継Q&A>Q:少数株主から株式を集約するため、買取交渉を行うことを考えておりますがどのように進めるべきでしょうか。

Category: ■ 事業承継Q&Aについて

A:一案として、以下ののステップに従って株式の買取交渉を行うことが考えられます。

ステップ① 目指すべき議決権割合を決定する

現状の株主構成を分析し、経営者が取得すべき株式数(議決権割合)を決定します。私見ですが、経営の安定化の観点からは、経営者が単独で議決権を100%保有すべきです。それが難しいようでしたら、定款変更や組織再編等の重要な事項を決定するために必要な2/3以上の議決権の保有しなければならないと考えます。

ステップ② 株価の把握

株式の買取価格にあたっての想定価格を知るために、税務上の株価と会社法上の株価を把握する必要があります。ただし、会社法上の株価は、会社が作成した事業計画に基づき算定するため、恣意性を排除する観点から、外部のコンサルタントに依頼する必要があります。そのため、先ずは決算書と税務申告書から算定できる税務上の株価算定を顧問税理士に依頼し、株価を把握することをオススメします。額面金額をベースに、配当還元価額、類似業種比準価額、時価純資産価額を組み合わせて、交渉材料の株価を算定し、株式集約にあたっての交渉戦略をたてましょう。

ステップ③ 株主構成の把握と買取方法の決定

現状の株主構成を把握し、誰から何株を取得すべきかシミュレーションします。まずは、買手との関係が悪くない株主との間で、額面金額(②の税務上の株価)をベースに買取交渉を行い、株式(議決権)の集約を図ります。

ステップ④ 交渉

いよいよ実際の交渉になりますが、交渉方法は、各株主との関係性によって変わります。私の実務経験からいうと、買手と株主との関係が良好な場合は、電話や手紙による場合が多く、疎遠な場合は、まず手紙を送り、当事者間で話合いをベースとする方法がまとまりやすい印象にあります。

なお、税務上・会社法上の株価に配慮することは重要ですが、特定の株主から無用に高い金額での買取価格に応じてしまうと、その買取価格の先例となり、予想外のキャッシュアウトが生じてします可能性があります。そのため、交渉のスタートは、額面金額(②の税務上の株価)を提示することをオススメします。少数株主は、会社の経営に関心がなく、株式を持ち続けることに興味がないことが多く、額面金額での買取りに応じてくれることが多いです。

ステップ⑤ 株式の買手の決定

株式の買手として、経営者又は会社(発行会社)が考えらえます。なお、買手の主体によっては、法務手続きや税金の課税関係が大きく変わりますので、事前に会計士や税理士にご相談ください。

さいごに

当事務所には、株式集約の実務経験とノウハウが豊富にありますので、お気軽に田村までお問い合わせください。